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【平岩弓枝】五木寛之さんの小説家もつらいよ
五木寛之さんが、2023年6月9日に亡くなられた平岩弓枝さんのことを、週刊新潮2023年6月29日発売号のコラム「生き抜くヒント」で書いています。
一人で作業する作家さん。
小説家 五木寛之さんも私たちサラリーマンのような「つらい経験」をしているようです。
五木寛之さんは直木賞と吉川英治文学賞の2つの選考会の委員をしていました。
平岩弓枝さんも同じく2つの賞の選考会委員をしていた。
ちなみに直木賞では
五木寛之さんが第72回~第142回の選考会委員
平岩弓枝さんが第97回~第142回の選考会委員を務めていた。
吉川英治文学賞では
五木寛之さんが第25回~第54回の選考会委員
平岩弓枝さんが第34回~第54回の選考会委員を務めていた。
吉川英治文学賞の選考では五木寛之さんと平岩弓枝さんは隣り合わせの席だった。
平岩弓枝さんは選考に関して一徹なところがあり自説を曲げない。
大多数の選考会委員が賛意していても、一人賛成しないことも多かった。
サラリーマンのような選考委員会
サラリーマンの会議でも反対する人がいて、なかなか結論がでないことがあります。
サラリーマンの場合は、序列があるため、反対者がいても、なんとか話がまとまります。
選考委員の場合は対等でしょうから、平岩弓枝さんのような委員がいると結論が出ません。
五木寛之さんの文章に戻ります。
そんな(平岩弓枝さん一人反対している)時は、自然と隣席の五木寛之さんに調停役がまわってくる。
「高齢者作家同士で話をまとめてほしい」といった空気に包まれる。
五木寛之さんが、恐る恐る平岩弓枝さんの説得に回ったことが幾度があったそうです。
恐る恐るの表現は五木寛之さんの言葉です。
「みなさんがそこまでおっしゃるなら、わたしは授賞に反対しません。でも、この作品を私が認めないことは申し上げておきます」
大作家になった五木寛之さんでもサラリーマンのように、つらい思いをされている。
平岩弓枝さんに叱られ、横を向かれた五木寛之さん
平岩弓枝さんに叱られたときの話
選考が終了して、由緒あるお店での食事会。
ここでも隣は平岩弓枝さん。
御膳の上にそえられている割りばしに、白い小さな紙が巻かれていた。
博学な平岩弓枝さんに五木寛之さんが訊いた。
「この割りばしに巻いてある紙は、なんというんですか?」
平岩弓枝さんも知らなかった。
店の人にたずねたが、わからない。
たずねたお姐さんが戻ってきて
「ハシオビというんだそうです」
「箸帯(はしおび)、ねえ、いい言葉じゃない」と平岩さん。
「では、ひとつ帯(オビ)をほどかせていただきましょうか」
「変な妄想するんじゃないの」と平岩さんに叱られた。
よく平岩弓枝さんが五木寛之さんに言った。
「五木さんは何にも知らないんだから」
あるとき
「平岩さんだって箸帯(ハシオビ)を知らなかったじゃないですか」
と五木さんが言うと
平岩弓枝さんは、ふん、と横を向いた。
平岩弓枝さんの有名な作品
五木寛之さんも読んだ「御宿かわせみ」
まとめ
話が少しそれます。
2023年7月上旬時点で、永井紗耶子(ながい さやこ)さんの作品「木挽町(こびきちょう)のあだ討ち」が第169回直木三十五賞候補になっています。
アマゾンの読者の評価コメントが下記です。
ポン太さんのコメントを簡単に書くと「平岩弓枝さんの『御宿かわせみ』より『木挽町のあだ討ち』の方が文学作品らしさで優っている」
五木寛之さんの半分ジョークでの「平岩さんだって箸帯(ハシオビ)を知らなかったじゃないですか」の発言に対しての平岩弓枝さんの反応。
ふん、と横を向いてしまった平岩弓枝さん。
もし平岩弓枝さんが直木賞の選考会委員を続けられていて、このポン太さんのコメントを読んでいたら大変だったかもしれません。
「私の作品が負けるはずがない」とソッポを向かれたかもしれません。
五木寛之さんの文章に戻ります。
3年前の吉川賞の選考会に平岩弓枝さんの姿はなかった。
その時に
五木寛之さんは「私もそろそろ引きどきだな」と感じたそうです。
そして、このような文章で締めくくっています。
隣に平岩弓枝さんの姿のない選考会は淋しかった。
このブログは週刊新潮23年6月29日発売号のコラム「生き抜くヒント」を参照