作家佐川光晴さんが猫から幸せホルモンをもらった。

猫から幸せな気持ちをもらった作家佐川光晴さん

団地育ちの佐川さんは猫を飼ったことが無い。奥さんも子供のころに犬を飼った経験があるだけ。それがいきなり4匹のネコちゃんを飼うことになった。

佐川さんの敷地に母屋がある。妻の両親が住んでいたが前年に続けて他界。一時的に人が住まなくなっていた。
そこの場所に野良猫が4匹の子猫を生んだ。母親猫はかなりの老猫だった。4匹を生んで数日後に母猫は行方知らずとなった。

年取った母猫は自分の死期を悟って姿を消したかもしれない。
佐川光晴さんは母猫に代わり子猫たちの親になることを決心した。奥さんも子供たちも反対しなかった。

朝夕に水と餌を与えているうちに、子猫たちは佐川さんに対して警戒心をゆるめていった。
佐川さんがベンチに座っていると、佐川さんの脛(すね)に体をすりつけてきた。ネコちゃんの親愛の挨拶だ。
佐川さんは感激した。それから子猫たちは佐川さんの指を舐めたり膝や肩の乗ってきた。

満ち足りた生活

佐川さんは「満ち足りた生活」を実感した。
子猫たちが庭を駆け回る。庭の木に駆け登る。たっぶりと遊んだ後は、陽だまりで昼寝をする。
「満ち足りる」とは猫を表すための言葉ではないかとさえ思う。

このまま庭で飼いたいと思ったが
獣医師のアドバイスに従い家で飼うことにした。
賢いネコちゃんたちで、すぐにトイレのルールを覚えた。

夏に入院

佐川さんは、22年の夏に劇症の肺炎を発病して緊急搬送された。
細菌感染が原因。過労から免疫が低下し一時は生死の境をさまようぐらい重症化した。
幸い3週間強の入院を経て退院できた。

ネコちゃんたちは3週間強、佐川さんと離れていたが忘れていなかった。
退院した日、ソファーに座ると挨拶にきてくれた。佐川さんの脛(すね)に自分のからだをすりつけてきてくれた。

佐川さんが順番にネコちゃんたちを抱き上げた。ネコちゃんたちは目を細め、かわいい鳴き声を聞かせてくれた。
退院から4か月過ぎて、体も元にもどり仕事(作家活動)を再開している。これまでは1日中パソコンに向かって執筆してきたが無理をしないことにした。午後9時には奥さんと共に床に就く。

還暦前に大病を経験した。もう無理はきかなくなった。体の変化を受け入れて創作活動に生かしていきたいと佐川光晴さんは考えている。
近く「猫にならって」を刊行する予定。
ネコちゃん好きには楽しみな一冊になりそうです。


このブログ記事の内容は日本経済新聞22年12月24日の文化面記事:佐川光晴氏の「猫のあいさつ」の内容をもとにしています。